※ 第11回総会で採択された「2010年度活動方針」のうち、
  「はじめに」と「平和・国民運動の前進」の項を掲載します。


 
はじめに
 
 8月30日投票の衆院選で民主党の308議席獲得をはじめ野党が勝利し、自公両党が惨敗しました。9月16日には鳩山由紀夫民主党代表を首相とする民主・社民・国民新3党連立の政権が誕生しました。3党の「連立政権樹立にあたっての政策合意」では「憲法」について「唯一の被爆国として、日本国憲法の『平和主義』をはじめ『国民主権』『基本的人権の尊重』の三原則の遵守を確認するとともに、憲法の保障する諸権利の実現を第一とし、国民の生活再建に全力を挙げる」と明記されました。憲法理念の実現に向けた可能性が広がったといえます。しかし、その実現には多くの紆余曲折が予想されます。したがって新政権を支える大衆運動の強化が問われています。 埼玉平和センターはこの1年、各構成組織の協力を得ながら活動してきました。2010年は、イラク・アフガニスタンからの外国軍隊の完全撤退、憲法審査会の始動反対、米軍再編の具体化反対、沖縄・普天間基地の撤去と辺野古への基地建設反対、日朝国交正常化、狭山第3次再審闘争の勝利など、私たちの真価が問われる重要な年です。これまでの活動に自信を持ちながら、一歩前に踏み出したいと思います。
 1999年12月に平和・人権運動を担う労働組合の組織として活動を始めて10年が経過し、今回第11回総会を迎えることができました。6年前から民主団体や個人にも加入を呼びかけるようになりましたが、その責任はますます大きくなっています。
 そこで、埼玉平和センターは、2010年度の重点課題を次のように設定します。
 1,埼玉県平和運動センターの名にふさわしい平和・国民運動の一層の推進を図ります。各構成組織と各ブロック、地区から平和憲法の改悪に反対する運動を強化します。
 2,組織の拡大、強化を実現します。新規加入組織と個人会員の拡大に努力します。 3,制度・政策要求、学習活動の推進を図ります。
 4,中央の「フォーラム平和・人権・環境」(平和フォーラム)や関東ブロックをはじめとする各都道府県の平和運動センター、全国基地ネットワークとの連携の強化を図り、平和・国民運動を推進します。


 
Ⅰ、平和・国民運動の前進
 
 1,護憲運動の強化
 憲法の改悪に反対し、平和と民主主義、人権を守る運動を今後とも強化します。とりわけ平和フォーラムが提起する諸課題への取り組みを推進します。
 来年5月18日に改憲手続き法が施行されます。衆議院で強行採決され、参議院では18項目もの附帯決議が付いた欠陥法です。国民投票の成立要件を「有効投票総数の過半数」とする低い水準としたり、公務員や教育者の運動を制限するなど、憲法改悪のための悪法であり、憲法審査会の始動に反対します。また「国民保護計画」に基づく労働者・市民に戦争協力を強いる動きに反対します。
 来年は日米安保条約が1960年に改定されてから50年にあたります。在日米軍の活動を「極東の安全」のためとしてきましたが、半世紀を経た現在、大きく変容しています。米国はアジア・太平洋地域を統括する陸・海・空・海兵の4軍の司令部と実戦部隊を日本に集中し、「不安定の弧」と呼ぶ東北アジアからアフリカ大陸東岸まで軍事介入する際の中軸基地にしようとしました。沖縄での基地新設や横須賀への原子力空母の配備はその一環です。その米軍を自衛隊が支援することは「専守防衛」の範囲を逸脱し、憲法が禁じる「集団的自衛権」の行使につながるものです。そのため県内基地移設や沖縄戦の史実改ざんに反対して闘う沖縄県民と連帯します。5月の平和行進や第12回沖縄平和交流に取り組みます。
 また来年は日本が朝鮮半島を植民地化した韓国併合から100年にもあたります。朝鮮半島をめぐっては朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の核開発をめぐる6カ国協議が中断するなど、困難な状況が続いています。日朝両国がピョンヤン宣言に基づいて東北アジアの平和と日朝国交正常化に向かうことが重要です。
 来年1月末には軍都横須賀と戦争遺跡が多く残る館山を訪れる平和学習を予定していますが、自らの目と足で戦争につながるあらゆる動きに反対し、学ぶ取り組みを強めていきます。11月の護憲大会を受け、ブロックでの護憲集会が取り組まれていますが、今年度も地区平和センター(地区労)を軸に護憲の取り組みを進めます。


 
 2,原水禁運動の強化
 今年1月に就任したオバマ米大統領は、「核兵器のない平和な世界を追求すべき時が来た」として、2010年の核不拡散条約(NPT)再検討会議での大幅な核軍縮推進などを打ち出し、広島・長崎への原爆投下についても「道義的責任」に言及しました。鳩山首相も国連の場で核軍縮に日本がリーダーシップを発揮することを明らかにしました。オバマ大統領が地球上に核兵器がある限りは米国は抑止力として維持することを言明していることは問題ですが、国内外でこれまで停滞していた国際的な核軍縮が大きく動きだそうとしているのです。
 これまで日本政府は核廃絶を訴えながらも、一方で米国の「核の傘」に依存するという矛盾した政策をとり続けてきました。「核密約」も存在しました。被爆国の責務として積極的に世界に平和と核軍縮のリーダーシップをとることを宣言したいま、新政権の具体的な動きに注目するとともに、私たちも積極的に働きかけることが重要です。
 また地震大国日本には53基の原発が林立し、「原子力の平和利用」の名のもとに青森県六ヶ所村では原発から出た使用済み核燃料を処理してウランとプルトニウムを取り出す再処理工場が稼働しようとしています。さらに高速増殖炉もんじゅやプルサーマル計画も強引に動き出そうとしています。日本の原子力政策の行き詰まり、破綻は明らかです。10月3日には原子力政策の転換を求めて7000人が結集する集会が東京で開かれましたが、原発立地県などと比べ取り組みが十分とはいえません。反省しながら、脱原発に向け取り組んでいきます。
 一方、ヒロシマ,ナガサキの被爆者は、原爆症の認定を求めて集団訴訟に訴えてきました。国は通算19連敗するなかでようやく8月6日に日本被団協と政府・自民党との間で「原爆症認定集団訴訟の終結に関する基本方針に係わる確認書」を取り交わしました。一審で勝訴した原告について国が行っている控訴を取り下げ、訴訟を終結させることなどを確認しました。しかし、あいまいな点や課題も多く、さらなる努力が必要です。
 被爆者の生の声を聞く機会を増やすことなどに留意しながら、21世紀を担う若い世代への着実な運動継承を図ることが重要な課題です。合わせて埼玉県民の貴重な財産である&原爆の図丸木美術館への支援を進めます。「ヒロシマに学ぶ埼玉子ども代表団」は来年17回目を迎えますが、参加総数はこれまでに300人を超えました。今年初めて参加者の“同窓会”を開きましたが、その成果を生かしていきます。またカンパ活動を実施します。
 また非核平和行進や原水禁大会とほぼ同時期に取り組まれている原爆絵画展、青年の反核平和の火リレーとも連携を強めていきます。さらに「非核自治体宣言」の採択と実効ある取り組みを求めていきます。
 
 3,埼玉教育フォーラムの強化
 教育基本法の改悪、そして新自由主義に基づく構造改革路線により教育現場に管理や競争主義、格差、差別の構造が持ち込まれています。保護者の経済問題や雇用不安は子どもの生活や就学にも大きく影響し、「子どもの貧困」が深刻な問題となっています。給食費の支払いができない家庭が増え、授業料滞納による中途退学者が急増しています。そのうえ、様々な補助金の削減により教育費の確保が困難な状況が生まれています。さらに「高校再編」の名の下に高校の廃校計画も出されています。憲法に保障された教育の機会均等が脅かされています。
 12月8日には「子どもの貧困・格差問題を考える集い」が開かれましたが、子どもの権利や成長のために「埼玉教育フォーラム」に結集して憲法理念の実現をめざします。
 
 4,部落解放県共闘会議の強化
 狭山裁判は第3次再審請求の申立てから3年余りが経過し、弁護団は多くの新証拠を提出し、東京高裁に事実調べと証人尋問、東京高検には証拠開示を強く求めています。今年9月には事実上初めて東京高裁と東京高検、弁護団による協議が行われました。再審開始への期待を抱かせる動きですが、東京高検は証拠開示を拒否しました。12月に再度の三者による協議が予定されていますが、予断は許されません。再審開始と証拠調べを求める世論を大きく高めていかねばなりません。
 事件から46年余り経過しながら、支援の輪を広げ粘り強く闘われている狭山闘争に連帯していきます。狭山事件の当該県として、また部落解放県共闘の一員として、解放同盟県連や「狭山事件を考える住民の会」などと連携し、再審を求めて闘います。とりわけ、若い層に運動のすそ野を広げる努力を重視します。
 また部落解放・人権確立制定要求運動に連帯する取り組みを強化します。後を絶たない悪質な差別事件を許さないため当面、「人権侵害救済法」の制定に向けて協力していきます。
 
 5,食・みどり・水と環境を守る埼玉県民会議との連携
 相次ぐ食品偽装の発覚や地球温暖化問題が世界的に深刻化するなかで食料や水、森林、健全な地域社会の大切さが再認識されています。
 しかし、水田農業は米価の下落と飼料高騰、酪農・畜産は異常気象と穀物奪い合いによる飼料価格の高騰でコメ作りの放棄、倒産続出が予測される事態となっています。さらにWTO農業交渉やFTA日豪交渉の結果次第では安い輸入農産物が国内市場を席巻し、国内農業に致命的な打撃を与えかねません。米作農民や酪農・畜産農民は「日本に農業はいらないのか」と訴え、その存続と発展を呼びかけています。
 みどり、水についてもその重要性が指摘されながら、現実には切り捨て、民営化の流れが強まっています。
 新年度も食・みどり・水と環境を守る埼玉県民会議と組織的には並存しながら、活動していくこととします。また、埼玉平和センターは、中央のフォーラム平和・人権・環境の食・みどり・水委員会の窓口としての役割を果たしていくことにします。